春先に着る服は持っていなかった。薄手の羽織るものをなにか、と思いながらもショップに行く面倒くささに負けている間にじりじりと焼かれるような日差しになって、そうすればあっという間にシャツ1枚、よれたTシャツ、タンクトップと移り変わり、部屋では半裸で過ごすようになるからだ。
職場では服を支給されているし、休みの日は泥のように眠るだけ。だから手元にあるまともな服といえば、秋口にキッドが買ってきた落書きみたいなハイネックぐらいのものだった。
滅多にない待ち合わせにジーンズとそれを着て行って相手に微妙な顔をされるまで、何とも思ったことはなかった。
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2025.5