後に腐る

これは海賊だったと、正しく思い出させてくれる光景だった。鼻をつく臭さが、数刻前まで目の前のパーツたちが生きていたことを物語っている。
「お前の能力なら血を流さずバラせるんじゃなかったのか」
葉巻の煙で鼻腔を上書きしながら、ついそう零してしまうほど。
生き物の息の根を止める行為は興奮する。人間がみな狩猟に駆けていたころからおそらくずっと。
「どう斬るか決めるのはおれだ。弱ェ奴は選べねぇ」
天井、壁、床にあますことなく赤をぶちまけた部屋の真ん中に立つ死の外科医は、珍しく血色のいい顔で、鼻息荒く笑った。海賊めが。似合いの姿に思わず吸い口を嚙み潰しそうになる。
通報があった時にはすでに遅かったのだろう。違法薬物の出どころを調べていたのは海軍のG五支部、スモーカーの部隊だった。赴任して日が浅い部隊は小さな伝達すら行き届かず、事はまったく思うように運ばない。気はいいが仕事が雑で横着な奴が多いからだ。「ここは掃き溜めだ」とは基地長ヴェルゴによる説明で聞いた。
こちらも七武海になって数か月の、トラファルガー・ロー率いるハートの海賊団の潜水艦が目撃されたのは五日前。それからクルーの姿を島内で見たという報告は入っていない。特徴的な揃いのツナギでわざわざ歩いてくれるはずもない。共同で任務に当たるようにとは通達で読んだが向こうからの接触はなかった。これまでも何度かこういうことはあり、だいたいスモーカーが部隊の情報伝達にまごついている間に奴らが大方を済ませている。七武海にしては気味が悪いほど協力的で、無茶な要求もしてこない。こんなに現場で人を斬ったところも見たことがなかった。舌打ちすら生臭いなと、スモーカーは苦々しく葉巻をふかす。
取引が行われる現場を押さえられそうだと部下が息巻いたものの、包囲した倉庫はもぬけのからで、何やらもめ事が起きているとの住民の通報で駆け付けたのが、この場所だった。何の変哲もない民家だが、よくあるつくりで地下室があった。扉を開ければ血の惨状だ。壁際に手足やそのほかの切り離された人体が乱雑に、もはや誰のものかわからぬほどに捨てられている。一緒に降りた部下は腰を抜かしたので引き返させた。
「出どころはわかったのか」
「麻薬と武器は権力者がやってるってのが定番だ。ありきたりな、くだらねぇ話だよ」
名を鬼哭といったか。長刀にもたれた男は何がおかしいのか、ゆらり、ゆらり、と左右に揺れていた。若い男の間では流行りなのか、はたまたこいつの趣味なのか、高いヒールのブーツは踵が浮ついている。
「証拠はあるのか」
「顧客リストを握った腕をあんたの部下に預けたぜ。島の財務を担当するところの制服を着てるさ。安心しろ、そっちはちゃんと能力で斬った。裁判所で口がついている方とつなげてみせるんだな」
そんな報告は入っていない。スモーカーはまたしても舌を打った。奴ら、勇んで役所へとんでいったに違いない。せめてたしぎの同行があることを願いたいものだ。最初から「大佐ちゃん」と懐かれたあいつになら報告が届いているかもしれない。
スモーカーはグローブをはめた手で鼻を塞ぎながら下りて来た階段の方へ向く。さすがに新鮮な空気を吸いたい。
「あー、助かった。お前たちの取り分については、薬の現物とリストと首長とを処理してから話す」
「まぁそう急ぐなよ」
「逃げられたら困るんでな」
そう言った鼻先に突然、あの白くふわっとした帽子があった。この距離では浮遊感すら味わう暇がないらしい。スモーカーが昇ろうとした階段の一番下に、誰の肉だかがべしゃりと落ちる音がした。ここ数ヶ月で何度か目にしたオペオペの能力だった。
「放っておいても片はつく。ゴロツキだって、長く軍にいりゃ意外と手順はわかってるもんだ」
「そうでないからおれが行くんだ」
刀を抱いていた腕が片方伸びてきて、スモーカーの首にまとわりつく。酔ってでもいるのかと思うほど、体の芯が安定していない。
「はは、上手く作ったもんだ。血圧、脈拍の上昇、伴って体温も多少上がる。血管を開く薬を応用したんだな。そこそこ使える医者がいるらしい」
「なんの話だ」
「こっちは副産物らしいがな。まぁ、セックスドラッグってやつだよ」
胸元に吹きかけられた息は熱かった。取引に使うものとは別で、ほとんど息抜きに作ったようなものじゃないかと語られ、なるほどと合点がいった。スモーカーが返事をするより先に、ローがしゃべり続ける。
「うちのクルーに売ったんだ。まぁ、そいつもイイ思いしよう、なんてホイホイ知らねぇ薬物、を摂取したからまぁ、バラ、して甲板に並べてあるんだが、それはそれとして、うちの人間に、手を出すには、それなりの、なぁ?」
長く話すと呂律があやしくなる様子だった。時々唾を飲み込むような動きをして、そしてその度に心なしか背伸びをした。
「わかった。お前も医者なら自分の手当はできるんだな? なら一旦船に戻って」
「新しい薬剤は試してみるだろ、ふつう」
「おれは医者じゃねぇから、医者のふつうはわからねぇ」
面白がっているとしか思えない。オペオペの実の能力であれば、体内から薬を取り出せるのかもしれないが、そうだとしても、やばい薬だとわかっていて服用してみるものだろうか。
しかしそんなことはスモーカーが考えても仕方のないことだ。早くこの趣味の悪い海賊を引き剥がして、役所に行かなければならない。
「それもそうだな。循環を活発にする点はうまくできてる、が、勃起の、てい、どはあんまりだな」
ぎょっと思わず細いジーンズの中心部分を見てしまった。セックスドラッグといったか、確かにそこは心なしか膨らんでいるような気もする。
「わかったから、船に戻れ」
「わかってねぇな、お前わかってねぇ。セックスドラッグだってんだから、セックスするところまで試してみるってもんだろ」
一生わかりたくはない。スモーカーは青ざめた。海賊とセックスだと。しかもこんなところで。にやにやと見上げては背伸びしてくる顔を避けながら、言い訳を考えた。スモーカーの人生において、言い訳を考えるなどという行為はめったにない。だからそれらしいことを組み立てることが得意であるわけがない。
「すまんが、おれは女しか抱かねぇ」
その言い訳が大失敗であったことは、避け損ねて顎を舐められた後に聞かされた長い談義でもって知らしめられる。無精ひげが刺さることも厭わず舌を這わすこの男が、さっきからキスをしようとしていたことも。
「軍隊なんかに入ってる奴は多くがヘテロだ。だが同性も抱く。これは寛容だなんて誉めてるわけじゃねぇ。手近なところで抑圧のガス抜きをするってのは最悪だ。そして弱い奴には上下の選択権がねぇ。お前はおれより弱い。だがおれは海賊だ。だから好きな方を選ぶ。ヘテロじゃねぇしゲイでもねぇ。単にどっちがラクで気持ちいいかを知ってるってだけだ。だからお前の棒を貸せ。粘膜にタンパク質が付着したときの変化をみる。てめェは一から十まで全部説明しねぇとわからねぇような唐変木だが、モノはよさそうだ」
さっきはつっかえていたくせに、随分と滑らかに喋るもんだ。呆気に取られている間にもうファスナーは下げられていた。いつの間にかローのデニムもずれていて、実物の勃起がスモーカーの下着に押し当てられる。
「おれは男も抱くなんざ言ってねぇ」
「なんだ将校サマは初心なのか? だぁいじょうぶだ、どうしてもいやなら目でも瞑ってねんねしてろ」
このくそがきが。罵倒できるものならとっくにしていた。低い天井は圧迫感がすごい。加えて、どちらを向いてもおびただしい赤が飛び散っているのが見えて、だんだんワインの中にでもいるかのように錯覚していた。長くいるほどに、葉巻ではごまかせなくなってきた臭いは、ワインなんて上等なものではないが。おかしな感覚に引きずられていると自覚したときには、スモーカーは普段には覚えることのないおかしな興奮を引き出されていた。もう一度伸びあがって来た顔はもう避けることができず、薄い唇で食われる。
「よせ……おれは海兵だ……」
「なんだ、ふわふわの能力なくせしてカッチカチの頭だな。海賊を抱けって言ってるんじゃねぇ、もう一度言うぞ、てめェのその棒を貸せ」
言われたところに異様な早さで熱が溜まっていく。刺青が踊る指で、的確に撫でられているからだとぼんやり捉える。血圧、脈拍がどうとか言っていたか。ローの手が後ろ首を撫でると、そこがどく、どく、と脈打ち、全身の血管を広げるかのように。頭への血流が勢いを増す。視界が赤いのもいけない。どどどっと下へおりていく血液は簡単にペニスを勃起させた。
ははっ、と笑った声がする。馬鹿にされている、そう思うとかっとなって、飽きずにスモーカーに吸い付いていたローの口元にかぶりついた。こんなに小せェ口で飯が食えんのか。葉巻を落としたのが癪で、邪魔な帽子を押しのける。ぺらぺらの上唇をめくってべろを突っ込んでやるとじゅうと吸い付かれ、揃った前歯で扱かれた。痛みの混ざるざわめきが舌の根を痺れさせ、たまらず喉に向かって、ぐ、ぐ、と挿し込む。どこから湧いてくるのか、溢れるほどの唾液がだくだくとローの方に流れていって、整った喉仏が上下するのが見えた。その形を確かめたくて、グローブをはずして親指で触れる。キスなんてもんじゃない。くちばしの長い鳥が長いグラスにそれを突っ込んで、少ない水を懸命に飲もうとするように、スモーカーはローの口に何度も舌を入れた。薄い舌と擦れるときにべちゃっと音が立つのはいい。震えるように感じ入るのも。上がっては下がる喉仏はいじらしい。薄皮一枚向こうの骨に少しだけ力を入れると、隙間からローが咳き込んだ。
「……はぁっ、なんだよ、意外とそっちの趣味?」
言いながらローの手がスモーカーの指を開いて首を覆わせる。そんな趣味はない。驚くほどその喉仏に惹かれただけで。だめだと思うのに、親指はそこをさすり続ける。くすぐったいのか、ローはふふふと笑った。
「かたちが、綺麗なもんだなと……」
「そう? 嬉しい」
なにがというのだ。褒められたことが? それとも、明らかにこっちがやる気になってきたことだろうか。嬉しいはずはない。お前の顔は笑っているようで笑っていないじゃねぇか。
こうまでくると、医療の知識の少ないスモーカーにだって、異常事態だと理解できた。
「もしかして、感染する、のか」
「カンはいいな、わんちゃん。残念、病気じゃないから感染はしねェ。血液だろうな。ここで遊んでた奴ら、みんな服用してたから」
まだ憶測の段階だが、と前置きしながらもローはキスの前からずっとスモーカーの幹を育て続けていた。ちゃんと話を聞こうとするのに、そうされると耳の横がばくばくして聞き取りにくい。親指と人差し指の輪でくびれを苛められると情けなくも腰が前へ振れた。
「気化した成分を吸っても似たような効果が出るんじゃねぇかな。遅効だし、服用ほどの効果はねぇけど。ああ、だけどこれほど勃つなら十分」
引くほどぱんぱんに棒が張り詰めていた。こんなに勃起したことがかつてあっただろうか。赤黒いグロテスクはしかし凄惨な部屋の中にあってなぜか似合いの光景で。
ローはさっさと臀部を出すと、鬼哭に体重をかけて、こちらに尻をつきだした。
「いや、だがな……」
「うるせぇな。挿れ方くらいわかんだろ? こっちは内服だ、てめぇの何倍も効いてんだよ」
理不尽も可愛く聞こえたような気がして頭を振る。おかしな薬だとわかっていて勝手に飲んだのはこの海賊だし、意味のわからない治験に付き合ういわれだってないのだ。なのに、スモーカーはもう片方の手からもグローブをはずして小ぶりな尻を掴んでいた。自分でないものが体を動かしていると思いたかった。
「スキンもなにもねぇぞ」
「タンパク質がいるっつってんだろ、余計なこと考えんな」
しかし何もかもが小さなこの体に、凶悪といえるまでにそびえ立ったものが入るのだろうか。下手をすると、ここのスプラッタに新しい鮮血を散らすことにはならないだろうか。脈が打つたびに揺れる頭でわざとそれを想像し、落ち着くようにとつとめる。穴を、確認しなければ。
少しも落ち着いていない思考はそう至って、丸い肉を割り開く。尾てい骨がふるふると揺れて、あん、と媚びる声がする。いわゆるヘテロ同士でセックスした際にも見えるそこは、しかし今までみたものとは少し違うような気がした。薄桃色の肉が盛り上がったような口は、キスをせがむ唇のようにも。スモーカーは慎重に指を這わせる。むに、とやわらかなのを何度か揉むと、皺の入った丸い口がきゅっと縮まり、こわごわと緩んだ。啄まれているようだった。なるほどと、そこを広げてみたり、くるりとなぞってみたり、そして押す様にしてみたり。本当に口のように見えるものだ。おもしろいなと繰り返すと、前から急かす声があがる。
「いいから、早くしろ馬鹿やろっ……」
振り向いた頬が赤い。そういえば最初から、前に見たときより健康そうだなんて思っていた。健康どころか、人工的に興奮していたわけだが。
「勝手が違っても知らねぇからな」
いまにもしゃべり始めそうな口に、指を食べさせてみる。痛くても文句言うなよと思ったが、痛みはないようだった。ふと違和感を感じて、ぐいと奥に指を進めると、すぐに肉の洞がもぐもぐと媚びてきて、おまけにとろみが触れる。おかしい。スモーカーだって、尻の穴が濡れないことくらい知っている。つまり、といくらかの可能性を考えていくと、なにか寒気のような轟きが背筋を走った。
「てめェ……これはどうなってる?」
出した声が黒く、怒りをはらんでいることに困惑した。
「さァ……どうしたことだろうなァ?」
はっはっと忙しく呼吸しながら、若い外科医は長刀の柄にすりすりと顔を懐かせ、首を傾げた。
スモーカーの指で探ったものが血でないのは明らかだ。もっとジェル状の、ぐちゃりとした何かがローの内側にはあった。
「だから、早くしろって言っただろう。昨日借りた棒でほぐれてるから、てめェはただ突っ込むだけでいい」
そこがすでに性器であることを、スモーカーは理解した。そしておいて行かれたような気になったことに驚く。海賊の男に。頂上戦争のとき、荒れる現場へ乗り込んでまで、時代の新しい種となる麦わらを逃がし、治療した男に。七武海となってからも無意味な殺戮をせず、時にケガ人を手当する男に、清廉さを勝手に抱いていたのだと。
「海賊めが」
「はははっ、最初からそうだって言ってんだろ。機嫌を損ねたなら謝るよ、昨日は玩具で遊んだだけだ、よさそうな棒がなかったからな」
先ほどとは別の興奮が脳を煮たたせていた。スモーカーは両手でしっかりとローの尻を広げ、いきり立ったペニスをずぬと差し入れた。口のようだと思ったそこが皺を伸ばし、大きくあーんとして亀頭を飲み込むことには腹が立った。
「ぁああっ……デカ、いっ……ぁ――……」
刀がぐらぐらと揺れていた。構う気は起こらなかった。傘のところが入り込み、そのままずずずと竿がローの尻を広げてゆく。小さな腰に、長大な肉の棒が入ってゆくのが、おかしなくらい細部まではっきりと見えていた。目はチカチカと瞬いているのに。それは勝手に抱いていた夢想を自分の手で塗りつぶすことと同じ。つやつやに濡れて腫れた内臓の壁を擦り上げることはかくも気持ちいいものかと。腰が抜けそうな痺れがスモーカーを襲っていた。
「くっ……そが!」
「あぁっ、いいっ、なぁ……もっと怒れよ、デカくなる」
尻を掴んでいた手で、思わずそこを叩いた。日ごろに寝屋でそんな悪事を働いたことはない。だというのにそれしか正解はなかった。丸い臀部に手を弾き返されて、もう一度。若く瑞々しい肌の音が鳴る。ひぃ、と鼻から抜ける細い嬌声とともに、脚元の赤に白が散った。ぽた、ぽた、と床に丸く打ち付ける海賊の精液。スモーカーの思考はぐちゃぐちゃだった。体液を吐き出したと思われるローのペニスを握る。いけないことのような気がしてさっきはよく見られなかったものを、確かめるように。
「や、ぁぁだめ、いま、さわんなっ……てぇ」
「なんでだ」
「やぁ、ぁあん、だめ、だっ、ぁあ、おれ、しお、ふくからっ」
自分と同じ器官だとわかっていて、その形をきちんと確認しなければと思っていた。亀頭は丸く、先端の口はつつましく、括れはくっきりとしていて幹はまっすぐに伸びている。いいな、好きな形だ。気に入って何度も輪郭をなぞるとローが聞き慣れない言葉を吐いた。しお? 塩か、いや潮か、女でもそうそう噴くやつはいない。疑問はますます指を動かした。もう一度射精を促すように、時々頭をつるんつるんと可愛がる。だめだだめだと首を振った男はすぐに、言った通りに潮を噴いた。勢いよく出たものが、床の白濁を洗う。
「大丈夫か」
「だい、じょうぶなわけ、あるかっ」
心配になるほどローの肩は上下していた。過呼吸にならないか。それなのにスモーカーの手はローの股間から離れない。やわらかくなった竿をぐにぐにと遊んでしまう。ローはやめろと繰り返し、そして同じだけ色っぽい声で鳴いた。上の口が鳴くほどに、突っ込んだだけのスモーカーのペニスは腸の中で揉み込まれて吸われた。そろそろ自分のものを動かしてぇなと思うころに、手の中のかわいそうなペニスがまた潮を噴いた。「あ」しか出なくなった声が部屋の中で反響する。膝があまりに震えて、ただでさえぐらついていた長刀がとうとう倒れ、がしゃんと不機嫌な音を立てた。がくんと前にのめったローの腰を掴んで支える。真っ二つに折れた体は床に手をついてこらえたらしい。血がついてしまった手の横に同じく汚れた白い帽子と、消えてしまった葉巻。不自然な姿勢になったせいか、穴がぎゅううと締まる。大丈夫かと思うより、体が柔らかいなという感想が先に出て、そうしたらもう竿を引き抜いて打ち付けていた。考えるのと行動するのとがずれるなとどこかで思ったが、もう棒を扱かれる快楽にしか意識が向かなくなっていた。
「あっ、あっ、まっ……て、あああ、そこ、そこっ、ああっ」
踵にヒールがあってもまだスモーカーの方が上背があるから、穴の位置に合わせて曲げた膝があっという間に笑った。だが少しも気にならないほどには、穴の具合はいい。そこ、と言われたところは少し膨れていて、ごりごり削るとぎゅうぎゅう締め上げてくれた。膝が疲れると少し伸ばし、今度は突き下ろすように奥まではめるとさらに奥へと誘ってくれるようだった。はじめ余裕のあったローが、ほとんど身動き取れない状態で、頭の悪い声しか上げられないのもとてもよかった。知らないうちに腸の中に一度吐き出していて、それでも止まらず腰を振ったのはたぶん薬のせいなんだろう。二度目の絶頂が近づくまでに、ローが吐き出したのが精液なのか潮なのか、それとももう出るものがないのか、スモーカーにはわからない。
「くそっ……とんだ目にあうもんだ……っ、出すぞっ」
「だせ、ぜんぶっ、ぁあぁぁっ、いい、あんっ、この棒いいっ」
わけがわからなくなっているくせに、それでもまだ腹が立つことを言う奴だった。スモーカーは苛立ちを下半身に込めた。自分の竿を擦るためだけにがんがんとローを揺さぶった。だがますます悦ぶのが穴の動きでわかってしまう。怒るとデカくなる、と言ったか。海賊め、くそがきめ、無法者め、そう乗せて挿し込むごとに、確かに膨張するような気がした。だのに柔軟にペニスを抱きしめる内壁はよしよしと優しく厳しく伸び縮みして戦慄いた。いい、と宣う声にも煽られる。薬のせいだ、と思いとどまることもできず、また手のひらをローの尻に打ち付けた。ぎゅむむとうねる壁がペニスを絞る。ローの声が官能を垂れ流している。血の匂いを忘れるほどの、生臭い体はふたつ。びしゃびしゃと立つ下品な音がどちらのものだったのか、誰も判断しない。

後に、タンパク質がどうだとか、七武海トラファルガー・ローが一応報告には来たが、スモーカーには内容がさっぱりわからなかった。分子の図だかもそれをたしなんだことがなければただの丸と四角だ。国をあげて違法薬物を作っていた首長と、癒着して斡旋していた海賊はすべて捕らえた。たしぎの功績だった。連絡がつかなくて、と困り顔を向けられたのは納得できないが、部下どもだけで乗り込まなかったことは褒めておいた。
件の海賊とは以来頻繁に共同させられることになる。顔を合わせる頻度が増えるごと、棒を貸すことも増える。最初のおかしなシチュエーションを思い出すからか、なぜかローとするとことには盛り上がった。スモーカーは深く考えることを早々にやめた。なにせ、相手は海賊。気持ちよくなれる方を選択すると言っていた、そのままに行動しているのだろう。ならばこちらも、海賊を抱いているなどと思う必要はない。そこに愛も情もない、気に入った形をなでているだけ、生きている臭さを共有するだけ。